新興国通貨の変動率

未発達な資本市場 短期的な変動率は高く

このように、新興国通貨は依然として世界経済やグローバルな資本動向による振幅が大きいことは否めない。国により差異はあるが、この理由は資本市場(株式市場、債券市場)の規模が相対的に小さいため、先進国からの資本流出入で株価や金利の変動が大きくなりやすいためである。同様に為替市場での売買高も少なく、為替相場の変動率は先進国通貨対比で相対的に高くなりがちだ。

 

一方、先進国サイドの問題としては、とくに米国の量的緩和に伴うマネーの増大によって、あるいは先進国全般の低成長・低金利によって、おのずと新興国に資金が流人しやすい環境にあることもある。先進国の低成長・超金融緩和状態は長期化するとみられることから、今後も数年にわたって新興国市場の相対的な魅力、資金流入には持続力があろう。

 

一方で、当面は世界経済が脆弱であることから何らかの外的ショックによる資金移動・資金流出が生じやすい点も考慮しなければならない。ただし、ここ数年の新興国通貨の混乱が、80年代の中南米危機や、90年代後半のアジア危機・ロシア危機のように新興国サイドの問題で発生したのではなく、先進国サイドの問題、あるいはグローバルな環境により発生している点である。もちろん今後も各国の状況を注視すべきではあるが、リーマンーショック後の展開が示すように、ショックの後の新興国市場あるいは新興国通貨の立ち上がりは、先進国対比で相対的に早いだろう。

 

ただ、今後は新興国のなかにおいても二極化、多極化の傾向を見ておく必要がある。二極化は、ブラジルのように資源を「持てる国」と、タイのように資源を「持たざる国」である。資源の有無で対外収支や国内経済の堅調さが異なってくる。持たざる国は相対的に世界経済の波に影響されやすく、また輸入子ンフレの脅威にさらされやすい。また多極化は、同じ新興国と一括りにするのではなく、「アジア」「中東欧」「中南米」という地域ごとに特徴の違いが今後は顕著になるとみられる点である。

 

今のところ、このなかではアジアが優位にみえる。輸出の拠点となるなど世界的な生産体制にしっかり組み込まれており、また高成長を続ける中国の影響も大きい。一方、中東欧は西欧経済と密接な関係にあることから、当面は低迷が見込まれる西欧との関係でファンダメンタルズ面で難しい局面が続くだろう。中南米はブラジルがいかに近隣を牽引するかが鍵となろう。地理的には米国経済の影響は相対的に大きく、また金融面では欧州の影響に注意する必要がある。

 

また、重要になってくる視点は、新興国でいかにインフレが抑制され、相対的な高成長・高金利が持続できるかといケ点である。為替相場の長期トレントを左右するのは購買力平価で、高インフレの継続は購買力平価の観点からは長期的な通貨安要因となる。新興国がインフレ率を安定させ、相対的に高金利が持続できれば、その通貨は堅調となる。低インフレを望むのは難しいとしても、中インフレ・高成長・高金利の新興国通貨が相対的に安定し、また先進国通貨に対する存在感を今後も高めていくといえよう。

 

今後の外国為替市場では、ユーロの買い戻しがすすみそうだ。「ギリシャがデフォルトしても、欧州の金融システムは大丈夫だ」との安心感を市場に植えつけるためのスキームが論じられ、進められることになるだろう。そして、そのスキームが整うまでの間は、とりあえずギリシャの破たんを先延ばしさせるような策が取られるのではないか。ギリシャから欧州金融システムへ、防御の焦点が変化してきたように思われる。FX投資家の方はユーロ高にのっていきたいところだ。