新興国のインフレ抑制政策

強いインフレ圧力 資金流入抑制に腐心

新興国は、ここ2年ほどは、むしろ資金流入をいかに抑制するかに腐心してきた。国際的な食料品およびエネルギー価格の上昇、堅調な内需を背景に、ほとんどの国においてインフレ率は軒並み上昇圧力を受けてきた。このため金融政策は引き締め基調で、数次にわたる利上げを実施した国が多い。先進国が軒並みリーマンーショックの後遺症、デフレ圧力に悩むなか、新興国は大量の資金流出にこそ直面したものの、経済そのものへのショックは少なく、立ち直りは早かった。

 

しかし、先進国が超低金利・量的緩和に踏み切ったのと対照的に、新興国はインフレ懸念・金融引き締めを迫られることになる。そして、こうした景況感格差・金利差は当然ながら先進国から新興国へと資金流入を促し、たびたび新興国サイドからは先進国、特に米国の量的緩和が非難されることとなった。

 

たとえば、ブラジルでは政策金利は今年8月のピークで12.5%に達している。こうした高金利は海外からの資金流人を促し、国内においてバブルを誘発する懸念がある。これはインフレ抑制を目指す金融当局の意図に反するものだ。また、こうした高金利によって生ずる急激な短期資本の流入は、その逆流が発生した場合に、それまでに形成されたバブルの崩壊ともども、実体経済に対する下方ショックが大きくなりかねない。そのため事前に資金流人を抑制し、バブルの芽を摘んでおく必要もある。

 

結果的に、ブラジルは利上げを実施しつつ、一方で資本流入を抑制すべく規制・税制面で対応するという「二方面作戦」をとってきた。ただし、現状では、世界経済の低迷から金融政策は緩和に転じ、加えて欧州債務問題への懸念からリスク回避による資金流出が増大。ブラジルーレアルも急落を免れておらず、対ドルでは7月の高値から一時は20%以上下落した。

 

インドはブラジルと異なり、株式中心の資本フローが為替相場を左右してきた。アジア諸国がおおむね経常黒字であるのに対し、インドは大幅な経常赤字国である。その赤字が恒常的に株式市場への海外からの資金流入でファイナンスされてきた点に特徴がある。高金利による海外資金流入という性格は弱い。

 

近年、インフレ率は卸売物価ベースで9%前後にまで上昇。インド準備銀行宙央銀行)は断続的に利上げを続けてきたが、金利水準はインフレ率に全ぐ追いついておらず、いわゆる「ビハインドーザーカーブ」の状態が続いてきた。そのことが金融政策に対する信認を弱め、ひいては中長期的な景気先行き見通しに対する信頼感を弱めて株価を抑制してきた。これにより、株式市場への海外資金の流入が止まり、継続的な利上げにもかかわらずインドールピーは対ドルで一進一退の展開。その後最近のリスク回避局面における株式市場からの資金流出で7月以降12%も急落してしまった。

 

今後の外国為替市場では、ユーロの買い戻しがすすみそうだ。「ギリシャがデフォルトしても、欧州の金融システムは大丈夫だ」との安心感を市場に植えつけるためのスキームが論じられ、進められることになるだろう。そして、そのスキームが整うまでの間は、とりあえずギリシャの破たんを先延ばしさせるような策が取られるのではないか。ギリシャから欧州金融システムへ、防御の焦点が変化してきたように思われる。FX投資家の方はユーロ高にのっていきたいところだ。